職場でD&Iを推進するためには、アンコンシャス・バイアスに加えて心理的安全性の担保も重要課題です。
目次
異なる意見をそれぞれの人が安心して発信できる状態を「心理的安全性が高い」と表します。
「私はこう考えます」と言っても大丈夫と安心して発言でき、他人の意見を無視せず「どうしてそう考えるの?」と聞いてくれる人たちがいて、さらに「ではどうすればいいのか」と考えていける環境のことです。
ダイバーシティについて専門的知識を有する我が社であっても、「なにをもって安全とするのか」については社員それぞれで考え方や捉え方が異なります。
それほど、人間の心理というものは人それぞれ違うものなのです。
「心理的安全性が高い職場づくり」とは、「率直に意見を言い合える場をつくる」ということでもあります。決してぬるい職場や仲良しクラブを目指すものではありません。
意見をぶつけ合う場は、みんなが仲良く居心地がよいだけでは決してありません。自分の意見を持つ、意見を発信することは一人ひとりが自律できていないといけないということであり、「心理的安全性が高い職場を目指す=非常に厳しい環境を目指す」ということでもあります。
誰もが意見を言える場づくりにおいて、最も重要なのは、管理職の対応です。
「威圧的」「無視」「暗黙のルール」「発言する人が決まっている」などはもってのほかであり、皆が意見を持ち、主張すること、意見をぶつけ合うことを怖がらない環境を整えなければなりません。
違う考え方があるからみんなで学ぶことにつながりますし、さまざまな意見をぶつけ合うことで新しいものが生み出されて成長となっていきます。
そのためには、これまでとは異なる境地に行くためにやること、と認識して、「なんのために」「どこに向かって」意見をぶつけ合っているのか照準をいつも合わせておく必要があります。
高い成果を上げる組織では、正しい成功循環モデルが構築されています。
組織として成果を上げるためには、「関係の質」の部分が重要です。率直であること、建設的に反対意見を言えることなくしてはイノベーションもありえません。
新しいものを生み出すためにしていることと、全員がきちんと理解できているかどうかがチームの成果を上げるためのキーポイントとなります。
対話とは「お互いの意味づけ、前提、思い込みなどを相互に探求するプロセス」だとされています。
「安全」という言葉ひとつとっても人それぞれ前提としていることが違うように、同じ言葉を使っていても込められた意味、解釈がまったく異なるケースは少なくありません。
その真意を探求するために行うのが、対話です。
「関係の質を高める」とは、その背景や本当に言わんとしていることを明らかにすることで、それぞれが考える言葉の裏にある真の意味を理解することができ、そのことが取り扱われた上で前に進めることができると、人は「心理的安全性が守られている」と感じることができるのです。
対話におけるコンテントとは、その場の話題・課題・仕事などの内容的な側面やグループ間で話されている・取り組まれていることで、私達が通常会話をするときは、この部分のみが中心に話されているといわれています。
一方のプロセスは、お互いの間で起こってることや個人の参加の仕方、気持ち、コミュニケーションのありよう、グループの進行方法や暗黙のルール、リーダーシップ、雰囲気などのことで、本人が心の奥底で本当は感じている、抱えているもの、グループの本質が多く含まれている部分です。
プロセスにすべてが隠れているといっても過言ではありません。このプロセスの部分においてわたしたちは、勝手に「きっとこうだろう」と決めつけて進めていることがほとんどです。
この「きっとこうだろう」が組織の文化や風土と呼ばれるものに影響しており、同じ様に感じていない、解釈していないマイノリティな人たちが居づらさを感じたり発言を控えたりする要因になっています。
深層心理は、見てわかるものではありません。関係性の質を高めたいのであれば、きちんとお互いに質問して真意をすり合わせることが必要です。
対話には、4つの段階があるとされています。
初めての人と会ったときには、だいたい儀礼的な対話で差しさわりなく進むことが多いでしょう。
儀礼的な対話や討論では、型にはまったアイデアしか出ません。参加している人のうち本当にその場に参画しているのが1/3ほど、といった現象も起こり得ます。
次に迎えるのが討論・衝突のフェーズで、さらに発展すると「相手を理解しよう」「自分を知ってもらおう」といった内省的な対話になります。
ここまでくると、議題・課題・問題だけの話ではなく内側で思っていることを聞こうとして質問する段階といえます。
内省的な対話ができてはじめて、生成的な対話つまりイノベーションを生むような対話ができるようになるのです。
まずは、このステップの中で自分たちは今どこのフェーズで話しているのかを意識してみるとよいでしょう。
内省的な対話ができるようになると、心理的安全性が高いチームや組織に近づいてきます。それは、自分の心の奥底で思っていること、感じていることを表に出して発言ができる場だからです。
内省的な対話は、「なんでも言って大丈夫」「間違っていてもいい」と安心しているからこそ成立します。
このフェーズからは、自分でも自身の心の内側に耳を傾けるようになります。そして自分だけでなく、お互いに深く理解しようと探求していくようになるでしょう。
対話では、「傾聴」することも重要です。
傾聴とは自分の経験や考え、価値観など全部いったん保留にして相手の全部を聞くということです。自分の考えや価値観と照らし合わせながら聞いてしまうと意見の部分しか聞けず、実際は何を思っているのか、どう感じているのかということに気づくことができません。
心理的安全性は内省的なところで話ができるかどうかにかかっており、ここで共に考えていくという関係性の質が高められることで、生成的な対話へと成熟していくのです。
内省的な対話をするためのポイントは次の2つです。
心理面の部分は、急いでるときや業務が忙しいときには取り扱わずに過ごしてしまいがちです。心理面を蔑ろにしたままでは、業務が強制的になっていきますし、相手からしても気持ちよく仕事ができないでしょう。
また、気持ちの部分や体調などはその日によって異なります。そのため、今の状態を知っておくだけで発言や行動の理由が理解できることも多くなります。周囲の人々から「分かってもらえている」というだけでも、安心感にかなりの差が生まれます。
「メタ認知力」とは、端的に言うと自分の状態を自分で客観視するということです。メタ認知力は訓練で身につくものであり、最初からできる人はほとんどいません。
自分自身の内側と外型の状態を心理的な部分を含めて捉えていくということは非常に難しいことですが、自分の心の声すらわからなければ、他人のことなどわかるはずがありません。
次回、Part4では自分を客観視できていない状態とは、どんな状態なのか?また、D&I推進を実現するにはずばり何をすれば良いのか?について詳しくお話しします。
ダイバーシティ&インクルージョンのお悩みは
以下よりお気軽にお問い合わせください。