こんにちは、藤原です。
先月、6月は少しインプット多めの月間でした。
何かというとアート・オブ・ホスティングという参加型リーダーシップのワークショップと
南山大学の組織開発ラボラトリーの開催に携わっており、
カナダからお招きしたファシリテーターから学ぶ時間を過ごしていました。
なぜ、組織開発か。
私なりの答えは、真のダイバーシティ推進は、人材開発と言われる個々人の能力開発だけでは限界があり、
人と人、グループとグループなどの関係性へ働きかけながら組織の文化に変容をもたらす必要があると考えているからです。
結局、自分と違う人との協働には、居心地の悪さや非効率な局面も通過するわけで、
そこに人と人がいる限り、関係性が存在することを無視することはできません。
さて、そのような中、今回は対話型組織開発(英治出版)の13章を執筆している、組織開発実践者、コンサルタントである、
クリス・コリガンとケイトリン・フロストをカナダからお招きしての場でした。
今回の学びを文字で表現しきれる気は全くせず、一見、小難しく分かりにくいレポートではないかと思いつつも、
いくつか共有させていただきたく、これを書いています。
<アート・オブ・ホスティングって?>
説明が難しく、きちんとした定義は存在していないのですが、
組織開発のホールシステムアプローチのワールド・カフェ、AI( アプリシエイティブ・インクアイアリー )、
OST( オープン・スペース・テクノロジー )、サークル、プロアクションカフェなど が統合されて
手法から実践 に昇華された参加型ワークショップです。
私の言葉で説明すると、
「違う考えや個性を持った一人ひとりが違ったままで一緒にいることができる場で、私たちが実現したいことに向けて、
主には対話を通してつながり、未来を共創していくための参加型リーダーシップのワークショップ。
そのための、理論や手法を学びながら、練習と実践をする時間」です。
複雑性の高い時代をどう歩んでいくべきかという理論の話が盛り込まれながら、
手法を体験したり、参加者が実践もする機会もある、そんな時間です。
(理論や手法を説明するとマニアックになりすぎるので控えますが、一応羅列だけしておくと、4相の実践、
ケオディック・ステッピング・ストーン、ケオディックパス、呼吸のパターン、2つのループ、
リビング・システム、あとは上述した手法など)
D&Iの観点からは、全体の設計そのものが違いを大切にする、
一人の小さな声を大切にするというつくりこみがなされているわけですが、
今回は特にワールド・カフェのハーベスト(出てきた意見の収穫)の仕方が、とても印象に残りました。
コレクティブだけど一つの声も落とさない、というようものでした。
よくあるワールド・カフェのハーベストでは、各テーブルで話されたことを最後にただ発表する、
みたいなのがありますが(私はこれは基本的にやりませんが)、
これだけだとワールド・カフェの醍醐味である集団からあぶり出されてくる集合知のようなものに
たどり着きにくい気がしています。
今回、クリスがつかったハーベストの手法は、各テーブルごとにこれまでのセッションを通して
共通しそうなキーワードをみんなで3つ選ぶ。
その3つのキーワードを付箋に書いて全体で共有しながら、近いものはくっつけてマッピングしていく。
そして最後に、一人ひとりが、テーブルの中の3つのキーワードに選ばれなかったけど
大切だと思うキーワードを一人1枚書いて、前に貼るというものでした。
クリスが何度も言っていたのは「たった一人の人が答えを知っている場合がある」ということでした。
何のためのダイバーシティ推進か、一つはイノベーションのためと言われていますが、たまたま声の小さい人、
組織の中で立場が弱い人に降りてきたよいアイディアや解決策もそれに気づき育てる土壌がなければ、意味がありません。
どのように意図的に、小さな声をも拾って耳を傾けあえる組織をつくっていけるか、
アート・オブ・ホスティングにはたくさんのヒントが詰まっています。
<第10回組織開発ラボラトリー>
昨年の参加に続き、私にとっては2回目の南山大学人間関係研究センター主催の組織開発ラボラトリーでは、
「複雑性に働きかける―不確かな状況でアクションを実行していくために― Working with Complexity」と
「コンテナをホストしホールドする(Hosting and Holding Containers)」の2つのワークショップが開催されました。
前者は、複雑性の高い現代、そもそも私たちが直面している問題をどのように見立てるのかを
クネビン・フレームワークに当てはめながら考え、
「複雑性が高い」ということはどういうことかをワークを通して体感しました。
終わりがなく、ちょっとした小さな変化でも全体に影響があって、
相互に関連しあっているということが一体どういうことなのかが本当によくわかるワークでした。
クネビン・フレームワークを簡単に説明すると世の中の問題は、
①原因と結果が「明確な問題」
②原因と結果は存在しているがそれを読み解く能力や経験が必要な「煩雑な問題」
③原因と結果の因果関係は事後に発覚する「複雑な問題」
④原因と結果が予測不可能なために因果関係はデタラメに見える「混沌とした問題」 の4つに分けられるとしています。
そして、今、私たちが直面している問題や取り組んでいる課題は、実は③であることがほとんどであるにも関わらず、
①や②を解決するときに用いていた考え方やアプローチをすることに、そもそもコトがうまく進まない原因があると。
では、③の「複雑な問題」に取り組むには、どうしたらいいか。
組織の中に起こっている事象のパターンを発見し、パターンを変化させていくこと。
ワークショップでは、この辺もワークを交えて学びました。
後者のワークショップのほうは、アート・オブ・ホスティングのエッセンスをお伝えしてくださりながら、
どのように創発的、生成的な対話がなされる場(コンテナ)をつくり支えるのかというお話でした。
その過程で、いかに自分が自分とつながっていられるかも含めて。
印象に残っているのは、何かを生み出すコンテナに必要な要素が、
①アトラクター(ひきつけるもの)
②境界
③アイデンティティ
④違い/多様性
⑤やりとり/環境 ということだったのですが、
グループの中の多様性は大切だがそれが高まれば高まる分、中心に強いアトラクターが必要だし、
中にいる人たちが安心安全だと感じることができる境界も必要だということでした。
何かを生成する場(コンテナ)をつくる際、多様性だからといって、無条件にやみくもに何もかもを許容して、
誰もかれもをプロジェクト・チームに招き入れるわけではない、
ということが自分の中で以前よりもクリアになった学びでした。
今はダイバシティ&インクルージョンといえば、
属性を切り口とした取り組み(女性活躍推進、LGBT、障がい者、外国籍のスタッフの登用、シニアの活躍など)、
そして最近はアンコンシャス・バイアス研修などの話が多いです。
しかし、今後はそれらを越えて、多様性なメンバーの声をどうしたら丁寧に聴き合って、
クリエイティブでイノベイティブな未来をつくっていけるか、
そんな取り組みに視点がシフトしていったらいいなと個人的には思っています。
そのときに、この組織開発の視点は役に立つだろうと。
というか、もともとアメリカで組織開発が必要とされたのは、
アメリカが多民族国家で人種、民族、言語、性別、宗教、価値観、パーソナリティなどが
異なる人がともに働くのが難しかったからだそうです(入門組織開発、光文社新書参考)。
このような切り口からダイバーシティ推進の取り組みを進めていきたいという方、
是非、お声がけいただけたら嬉しいです。一緒に何かを創り出していきましょう。
最後に、クリスとケイトリンからはたくさんのギフトをいただきましたが、クリスの言葉を紹介させていただきます。
~「より速くいくために、速度を落としましょう」 “Slow down to go faster”~