Diversity Caféダイバーシティ Café


ダイバーシティ Café - イベントレポート

特別セミナー(講演)
【イベントレポート/講演②】今がそのとき、セルフ・リーダーシップを意識し続けるきっかけを。
女性のリーダーシップ。女性こそが変革型リーダー。
2018.08.08

【イベントレポート】WisH株式会社 主催特別セミナー(2018年7月10日)

特別セミナー「一人の女性の小さな一歩が、やがて組織を変える!女性の強みを活かして組織に変化を起こす”セルフ・リーダーシップ”とは?」
講演②「女性のリーダーシップ。女性こそが変革型リーダー。」


「セルフ・リーダーシップ」をテーマに掲げ開催した特別セミナーでは、リアルタイムに活躍している女性リーダーたちが、日頃何を考え、どんなことを実践しているのか、2名の方をお迎えしご講演いただきました。本レポートでは、萩大島船団丸/株式会社GHIBLI代表、坪内知佳さんの講演内容を掲載いたします。

【講演概要】
市場に魚を卸すのが一般的な漁業において、お店への直接販売を始めた坪内さん。水産ド素人だった坪内さんが、旅館の配膳アルバイト中に出会った漁師さんから、パソコンが使えるという理由で漁師集団の代表就任依頼を受けたのが約8年前。反発し合っていた頃のエピソード。坪内さんの原動力となっている生きることへの想い。リーダーシップを発揮していく過程から、力強いパワーをいただいた講演となりました。

坪内 知佳氏  萩大島船団丸/株式会社GHIBLI代表

1986年福井県生まれ。2005年名古屋外国語大学外国語学部 英米語学科に入学。 大学を中退後、萩市へ移住。2010年10月に知見のなかった漁業の世界に飛び込み、2011年3月、約60人の漁業者をまとめ、萩大島船団丸を設立し代表に就任。農林水産省に6次産業化の認定を申請し、同年7月に自家出荷を開始。(2014年4月、法人化を果たす(株式会社GHIBLI)漁師集団とともに、船団を「家業」から「企業」にするため、日夜奮闘している。日経ビジネス2017年最も影響のある「次代を創る100人」などにも安倍総理やトランプ大統領とともに選ばれる。2017年7月テレビ東京「カンブリア宮殿」出演。

 

漁業の厳しい現実
山口県萩市に移り住んで出会ったのが、まき網漁業で生計をたてていた漁師たちでした。
萩大島で暮らしている彼らは魚が獲れても獲れなくても、いつも笑って生きていて、羨ましいと感じました。
ここにいたいと素直に感じたんです。リーダーになる、と決めたときの島の漁業は、
同じことをやっていったら右肩下がりでさがっていく。そんな状況でした。
資源は枯渇、経費は高騰、人出不足(後継者がいない)、作業が追い付かない、
魚の処理がおろそかになる、魚がおいしくなくなる、売上が減る、収入が減る。
「リーダーになるんだから、何かやらなくちゃ」
そう思って始めることを決意した、船上からお客様へお魚を直送する手法。
前例のないやり方に、これからどうなるか分からないという不安を口にする漁師たちがいる一方、
前例を私たちがつくろうじゃないかと、ただそれだけの想いでやり続けました。

 

この地域を守らないといけない。
私はここでこの人たちと水産に携われることが、一生かけてやるにふさわしい仕事だなと思ったんです。
和食の素晴らしさに気付いたこともそう。
昔はキャビンアテンダントになりたかった。
そのために英語を勉強し、航空会社の内定も得ることができた。
ただ、その当時は体調が悪かったんです。
それが化学物質過敏症という症状だと判明したのがここ最近。
化学物質が体に蓄積し癌になる病気で
余命を宣告されたこともありました。42度の熱が出てしんどいときに、
人間ってなかなか死ねないなと思いつつ、
「こういう生き方で明日死んだら後悔はないのか」と問いかけたら、
めちゃくちゃ後悔するなと思ったんです。
世界を飛び回る生活に憧れていたけれど、海の向こうより日本が素敵だな、と気づいたんです。
人のため、生きるために働いて、生きようと思ったんです。
6次産業を申請し国の認定を受けることになるのが、東日本大震災が発生した2011年。
当時、私の目の前にいる漁師60人は「俺たち一体これからどうなるんだ」と言っていました。
であるならば、福島の漁師さんたちはどうだろう。きっともっと、どうなるんだろう、と
思っているはずと思いました。

自給自足の島の未来
中小企業の社長が日本一多い福井市育ちの私は、幼少期から会社経営者の在り方を聞いて育ちました。
「融資額と同じ額の保険金を自分にかけろ」と聞き、そんなことはないと感じていました。
会社のために生きるのではない。自殺者・うつ病患者を一人でもへらす中小企業経営者になりたい。
そんなことも、なんとなく思い続けていました。

信号機、交番、消防署がない島。自給自足の生活。でも、福岡まで車で2時間。広島までも2時間。若者がみんないなくなるんですよ。ここにどうしたら若者が定住してくれるのか。そして島の収入源66%の水揚げがどうしたら上がるのか。
私たちが水産事業に取り組まなければ、福島の被災地は愚か、私たちの島さえも消えてなくなるんです。
当時の彼らに「このまま何もしなかったらマジでやばいよ」と言うと殴られるわけですよ。
彼らの言い分は「水揚げ高が下がっても単価があがるから努力しなくていい」「じいちゃんが海が青ければ、しょっぱければ魚がいるとそう習ったから大丈夫。」

彼らと出会って2年目、水揚げ高も落ち、魚価単価も下がったんです。
取れなくても収入あがってないじゃないかという現実。これはどうにかしなきゃいけないと思いました。
数日かかる納品から、新たな水産納品スタイル「8時間納品」が出来るようになるまでに、3年がかかりました。
人って必ず成長出来るんです。ゆっくり進んでもらえればいい。
普通の企業を落ちちゃうような彼ら。皆さんなら、3歩進んで2歩さがると言われると思うんです。
でも彼らには3歩進んだら5歩さがれと言いました。
出来たと思っていても絶対ずっこける、そう思っていたので。
同じ進捗でも、5歩さがれば8歩の経験値がつめるんですよね。
就職するまで成功経験を積まなかった彼らには、うちで経験をつんで、経験値の帳尻合わせをしよう。
最初のころはそういう思いで向き合っていました。
まず、運送業者さんと契約ができないんです。やっと取引が始まったと思ったら、伝票が書けなかった。
事務所に電話が鳴り響いたんですね。「字が読めなくてどこに運べばいいかわかりません。」
そこで、出社したらまず、ひらがな練習帳を書きはじめることから始めました。

 

変化の過程
市場で400~800円だった鯛も、直販すると20,000~30,000円に値段があがりました。
私はこれが地方創生と思っています。そうやって田舎から日本を元気にすると。
ミシュランのお店に食事にいったことはない彼らだけれど、彼らの魚はミシュランのお店に出されているんです。変わりたくないと言っていた彼らが、一人、また一人と変わっていきました。
株式会社にしてくれるなと喧嘩をしたのに、萩大島船団丸から株式会社ghibliに変わった理由は、
彼らが「堅い保険証がほしい」と言ったから。そんな出来事もありました。

サハラ砂漠の熱風突風のことをさす「ghibli(ギブリ)」に変えました。何もないあの日から、世界の海を変えたよ、と言ってもらえる集団になりたいと思っています。
前講演の島田さんの言うとおり、言霊って大事だと思っているので、想いをこめて名づけました。
結成から4年後、現場も彼らだけで任せられるようになり成長したタイミングで、
2015年から2年間は福島県にサポートとして通いました。
着る服も変われば、漁師の家族のサポートも変わり、地元ホテルが加工食品を作って
協力してくれるようにもなりました。
どんな人がどんなふうに食べているのか。
誰にどんなふうに届けなければならないのか
自分たちが何を努めなければならないのか。
これらを感じ取って、60歳近い漁師たちも着々と成長していくんですよね。
年齢は関係ありません。「成長させられる」というと偉そうですけど、その仕組みをつくれるのが、
中小企業の経営者、リーダーなのかな。と思います。

描けなかったけど伝えられた地球儀
形も色も全て違う図形を並べて、歯車がかみあっているように地球儀を描きたかったんです。
でも作ったスライドは平面図。当時はこれしかできなかった。
最初の5年間、社内会議で使い続けました。「どこが真ん中?」こう聞くと、皆真ん中にある図形をさします。
でも、3次元の球体を思い浮かべたら、皆それぞれが中心なんですよね。
皆自分なりに自分が正しいと思ってやっているんです。この世界観は大事だと思っています。
「自分は間違えていない。そんなはずはない。やってあげたのに。」となってしまうこともあります。
相手に伝わらなかったのは、何か理由があるのかもしれないと、ここは中心ではないかもしれないと、
自分の裏側・横側すべてを見回すことです。
バタフライテッドという言葉のように、みんながエンジンとなって力を発し、全てが歯車のようにかみ合っていれば、伝わって自分に戻ってくるんですよね。
分かり易い例をあげると、たばこのフィルターのポイ捨ても言い続けました。
自分が食べる魚にそのフィルターが入ってたらどう思うかと。
最初5年間はほそぼそとした、シンプルでちっぽけな活動でした。
それが今は、メディアに取り上げられ、パールのビジネス、旅行代理店の活動も始めています。
あらゆる方向に波動が広がり伝わっていき、どこまでいくんだろう、と思うほどになりました。

「女のくせに、よそ者のくせに、水産知らんくせに」と言われました。
出来ない理由を並べるとあれこれあがりますが、逆に出来ることがたくさんありました。
男女は関係ないと思っています。
けれども、関係ないのは、「適材適所」「やれる・やらない」あるということで、
女なら女らしく男と同じ道を歩むしかないんですよね。
同じことしようと思っちゃダメなんです。自分なら何が出来るのか、自分が得意とすることは何なのか。
私がやったことは料理長さんに「月ひと箱でいいんです、買ってください!」と言うことです。
魚のことは分からないので、納品書も魚を受け取った料理長さんに電話で聞いて、
後から納品書を書きました。

 

たった8年前は2歳半の子供を抱えたシングルマザーでした。
がむしゃらにやってきました。8年あれば十分なのかなとも思います。
生きて、今の仕事が使命と思って、大好きな海と空をみて過ごしています。
日本が元気になっている気がして、
世界が良くなっている気がして、海がきれいになっている気がして、楽しく毎日を生きています。

 


~主催者より~
「リーダーシップ」や「管理職登用」とう言葉に、女性たちは精神的に構えてしまったり「大変なことをやらされる」というイメージをどうしても持ってしまいがちです。
しかしここで言う「リーダーシップ」とは、先に立って、誰かを牽引するということよりも
より豊かな自分の人生を送るために、その大半を費やす仕事においても、自分の信念や
実現したい世界観を貫いて成果を出すために、自分自身を引き上げる力、として
”セルフ・リーダーシップ”と定義しています。

 


関連記事一覧

1.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第1弾】全体レポート 

2.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第2弾】島田氏講演 

3.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第3弾】坪内氏講演 *本記事

4.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第4弾】パネルディスカッション

ダイバーシティ&インクルージョン
お悩みは お気軽にご相談ください。