【プログラム内容】
HR カンファレンス2019-春-[東京] 2019年5月14日
心理的安全性の高い職場をつくる共感型リーダー3つのチカラ
【講演者】
白河 桃子氏(少子化ジャーナリスト/相模女子大、昭和女子大客員教授)
清水 美ゆき氏( WisH株式会社 代表取締役/心理的安全性 認定ファシリテーター)
2019年5月14日(火)に行われた
「HRカンファレンス2019春-[東京]」
心理的安全性の高い職場をつくる共感型リーダー3つのチカラ
についてのセミナーレポートをお届けします。
現場でダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが進まない要因として、
職場の心理的安全性が低いことが挙げられます。
多様な人材が能力を存分に発揮できる環境づくりが必要です。
多様な人材の活躍を阻む長時間労働という切り口からアプローチし、それぞれが相乗効果を生み出す土壌となる、
心理的安全性が高い職場を築くための共感型リーダーに必要なチカラについてお話しいただきました。
本レポートでは少子化ジャーナリスト/相模女子大、昭和女子大客員教授の白河桃子氏の講演内容を掲載いたします。
【第一部】 経営戦略としての働き方改革
【白河 桃子氏プロフィール】( 少子化ジャーナリスト/相模女子大、昭和女子大客員教授)
(しらかわ とうこ)東京生まれ。
慶応義塾大学文学卒業後、住友商事などを経て執筆活動に入る。
少子化、働き方改革、女性活躍、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマとする。
内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、
内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。
1、働き改革と3つのシフト
御社の働き改革はうまく進んでいますか?
白河先生の問いから講演がスタートしました。
昨年度に100社以上の企業を訪問し、経営者の方々にお会いし、
お話を聞いた中で感じた現場の実情について紹介していただきました。
働き方改革では、高度プロフェッショナルに注目が集まっていますが、
1番関係するは課題は、残業上限、年休義務化、実労働時間把握義務。
なぜ今、それを取り組まなければならないのか?
今、現場では3つのシフトが起きている。
1つ目は、過労死、過重労働などの見過ごせない課題となる人権問題。
2つ目は、柔軟な働き方、雇用形態を取り入れて多様な人材を採用しなければ人材確保は困難となってきている人材不足問題。
3つ目は、デジタルイノベーションの黒船。
3つ目のデジタルイノベーションの黒船は、
日本の物流に大きな影響を与えたアマゾンとヤマト運輸の関係でお話しいただきました。
デジタルイノベーションの黒船は、すべての日本のビジネスが影響を受ける課題。
アマゾンが日本で成功したことにより、ヤマト運輸は扱う荷物が多くなり、
過重労働が発生し、人件費が圧迫し、ヤマト運輸の素晴らしいビジネスモデルが
デジタルイノベーションの前では機能しなくなってしまった。
このデジタルイノベーションは悪いことばかりではないと白河先生はいう。
最後のワンマイルをロボットが運んだらどうだろうか?
駅に宅配ロッカーを設置など、様々なイノベーションが起こってきました。
この変化は、アマゾンが日本に来て成功したってだけでなく、
人の意識が変わったことも大きな要因となっているとのことです。
このことからもわかるように、どんなに素晴らしいビジネスモデルでも
人材が豊富だったころのビジネスモデルでは、もう追いつかない状況へと様々なことが起こり、
多くの業界がビジネスモデルの見直しに迫られています。
働き改革は、残業上限、年休義務化、実労働時間把握義務だけではなく、
3つのシフトの対応を踏まえたビジネスモデルへと転換する大きな時期にきているとのことです。
2、働き方改革と長時間労働問題
働き改革がうまく進まない原因として、労働時間の改革が挙げられます。
労働時間の改革により、管理職の方の過重労働が問題となってきています。
労働時間問題を解決するには、2つのポイントがあります。
1つ目は、自分で仕事を引き受けて部下に残業をさせないようにするのではなく、
チームで結果を出すために、時間の有限性に着目し働き方を設計することが大切。
2つ目は、テレワークがうまく活用ができていないこと。
うまく活用するコツとしては、全員が体験してみる。
特に管理職の方は体験してみるとかなり変わってきます。
テレワークは、今までの対面での会話関係がなくなるため、
新たなコミュニケーションの設計が重要となってくるとのことです。
また、中間管理職が持つ「長時間労働で勝ち抜いてきた成功体験」。
働き方改革の妨げとなる長時間労働DNAのアンインストールをしてから
働き方改革を始めるべきであり、
労働時間の施策、実労働時間の把握、行う仕事を決めるなど、
地味なことからコツコツと始めていくことが大切と白河先生は語る。
働き方改革に欠かせないのは、リーダーシップ、インフラ整備、マインドセット。
中でも1番重要なのは、マインドセット。
そして、働き方改革は、働き方だけでなく暮らし方改革でもある。
人口ボーナス期(長時間働く均質性が強み・ワンオペ育児・ワンオペ稼ぎ)から
人口オーナス期(多様性が強み・チーム育児・チーム稼ぎ)となり、
イノベーションが起き、新しい商品が生み出される時代へとなってきました。
どんなに働き方改革、ワークバランスが素晴らしくても、
1番重要な評価と報酬の面で、成果をだしても早く帰ることで、
残業代がなくなり、給料が少なることに対しては、マイナスのモチベーションになってしまう。
残業代がなくなり、生活ができなくなるという不安に対処するためにも、
働き方改革は評価と報酬の再設計がとても重要となってくるとのことです。
3、働き方改革と心理的安全性
働き方改革は、トップが宣言し、中間管理職を巻き込むことがとても大事。
トップは宣言しアクションの形を決め、制度を変え、ITへの投資など新しい仕組みをつくり、
PDCAを回していく、制度を導入しただけではなく、
しっかりと中間管理職の人達と運用し風土を変えていくことが1番の重要となります。
業務効率化は、マイナスを0に戻す効果はありますが、
本当の働き方改革は、生産性向上力が大切となってきます。
現状は、生産性向上力と労働時間が比例していない状況です。
ここで、Google社の例を取り上げてご説明いただけました。
1番生産性の高いチームは、何があったのか。
200チームを精査した結果。
心理的安心感の1番高いチームが生産性の1番高いチームであることが判明しました。
心理的安全性の高いチームとは、「会議でチームメンバーが同じ分量だけ発言している」
「誰かが失敗をしたときにみんなに開示して次の糧にできている」「上司が自分の弱みを部下に見せられている」
ことを指しています。
今、イノベーションを発動するのに求められるのは、心理的安全性と多様性。
多様性があって、さらに心理的安全性の元に安心してイキイキと働けるかがとても重要となってきます。
イノベーションを創出する条件は3つあり、
1つ目は多様性がある。2つ目は女性がいること。3つ目はGoogle社の結果にも表れた心理的安全性です。
イノベーションは賛否両論がなければ起こりません。
10人のうち8人が反対しても、2人が『面白いからやってみましょう』と言うところにイノベーションの種があるのです。
2人が臆せず語れるような環境こそが心理的安全性を意味します。
心理的安全性の高いチームは、
「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」が高いという成功の好循環モデルが見られます。
よって、幸福度の高い職場は成果が高いということです。
幸福度によりあるコールセンターの売上が34%伸びた、という実験結果もあります。
米国には幸福への投資という考え方があり、幸福に投資すると病欠が減り、
離職率が下がり、生産性が上がり、利益が上がり、創造性が3倍になると言われています。
関係の質を上げることで、お互いを尊重し、前向きな思考となり、行動の質が上がり、
新しい商品を生む結果へと繋がっていくことになり、正のサイクルが生まれていく。
関係性の質を上げるには、どうしたら良いか。
まずは、労働時間をしっかり有限なものとして成果を上げていく取り組みが重要。
それによって、チーム内に心理的安全性が生まれ、成功の循環モデルに入ることが、
これまでの取材でも散見されたとのことです。
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