Diversity Caféダイバーシティ Café


ダイバーシティ Café - 対談

「女性」×「働き方改革」
藤井佐和子
株式会社キャリエーラ 代表取締役
女性がイキイキと活躍できる社会になるためには
2019.11.29
Guest Profile

藤井佐和子

株式会社キャリエーラ 代表取締役

●(社)JCDA認定 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
●EQ ジャパン 公認トレーナー
●大阪商工会議所 メンタルヘルスマネジメント取得

■略歴:
1968年生まれ。
大学卒業後、大手カメラメーカーにて3年半、海外営業に従事。
その後、派遣やアルバイトで1年就業し、
株式会社インテリジェンスに入社。
8年ほど人材派遣、人材紹介部門のコンサルタント、
営業、および各部門立ち上げ
メンバーとして従事。常に3位以内の成績を収める。
2002年独立、㈱キャリエーラを立ち上げ、13,000人以上のカウンセリング、
年間200件のダイバーシティに関する講演、企業研修や執筆を行う。

■著書 :
「伝え上手でキャリアアップ!」(リヨン社)
「10%脱力生活」(NHK出版)
「女性社員に支持されるできる上司の働き方」(WAVE出版)
「あなたにはずっといてほしい、
と会社で言われるためにいますぐはじめる45のこと」
「どんな職場でも求められる人になるためにいますぐはじめる47のこと」(ディスカバー21)
「女性のためのライフワークバランス講座」(電子書籍)

■女性の働き方の変化について

清水:女性活躍推進法が施行され、ダイバーシティ&インクルージョン、
働き方改革と流れは進んできていますが、変化、成果はでてきているのでしょうか?

藤井:実直に継続的に取り組んでいる企業は変わってきていると思います。

清水:具体的には女性の管理職が増えてきているということでしょうか?

藤井:最初に離職防止、福利厚生の強化と共にワーキングマザー支援研修が始まりました。
その後、“働き続けること”“イキイキと働くこと”だけではなく、
キャリアも引き上げていくような施策へと移っていきました。
最初は、未婚者、既婚者でもお子様のいない40代、50代の女性管理職を増やすことを目標に取り組みを開始し、
その後、お子様のいる女性も対象にキャリアの引き上げを行う会社が増えていったように思います。

 

清水:その取り組みが進んでいる会社は、「働き方改革」がスムーズに行われているのでしょうか?

藤井:必ずしもそうとは言えないです。
「子育て支援」の働き方改革部分だけが膨らんでしまっている会社もあります。
歪として、独身の管理職が仕事を抱え残業時間が増加しているという現状もあり、
また、管理職のハードワーク問題もでてきています。

清水:管理職の残業時間を減らすような取り組みをしている会社もありますよね。

藤井:そうですね。ただ、実際に仕事は減ったのか。というとそんなことはなく、
管理職が抱える仕事の割合は変わらないため、ハードワークである事には変わらないのだと思います。
そんな現状を見ている、次世代の管理職を目指す人たちが、
管理職になることへ躊躇する声が上がってきてしまっているという現状もあります。

 

清水:なかなか、その問題をどうするか具体策がないですよね。

藤井:管理職の女性社員や育児中の女性社員が両立しながら仕事を続けていくためには、
働きやすい会社、働き甲斐のある会社へ変わっていく必要性を感じています。

 

清水:管理職の働き方が変わったら、キャリアアップへのイメージは変わるのでしょうか?

藤井:ライフイベントとの両立をイキイキと実践している管理職が沢山誕生すれば、
「安心、大丈夫」と思う人が増えていくのではないかと思います。
現在、子育て中の女性管理職の人たちが良い形で機能し、数が増えていったら、
働き方改革にもよい効果をもたらすのではないでしょうか。
また、現在の女性管理職の方たちが自発的に取り組み、結果をだしていけば
その後に続く世代にも伝わっていくと思います。

 

清水:女性活躍推進などの取り組みで、一定数の人たちがマネジメント職に上がっていると思いますが、
まだ成果としては見えづらいですか?

藤井:そうですね。もうちょっとかなと思います。
男性的な働き方をしている女性管理職がまだ多いかなと感じます 。
必ずしもその働き方が悪い、という意味ではありませんが、
その姿が、若手には管理職を目指しづらい、頑張りたいけれど、
あのようには無理、とハードルを高く感じている人もいるようです。

 

清水:男性的な働き方とは?

藤井:バリバリ働く、家庭を顧みない。
「自分たちの時代はもっと○○だった」、「今は、手厚くし過ぎだ」などの意見も
部下育成研修に参加している女性管理職から声が上がったりしています。
また、ベテラン 男性管理職が活躍している現状の中、中堅管理職が自分らしく活躍できていないのが現状です。
世代交代したら、色々と変わっていくのではないかな と感じています。

 

 

■女性社員への期待されること、求められていることへの変化

清水:“変わる”ことに対して、女性にだけフォーカスが当たり、強く求められているように感じますが、
期待されること、求められていることは以前と変わってきているのでしょうか?

藤井:会社が期待する成長、管理職を目指し、
それができないのであれば、何で貢献ができるのか考えることも必要です。
このままでいたい、成長したくないと現状維持の考えのままでは、必要とされづらくなります。
依存ではなく、どう会社に貢献できるのか、自分の役割を認識し、
自分自身の今後のビジョンを持って、会社に所属することが求められているのです。

 

清水:ちょっと話がずれるかもしれませんが、若い世代の人たちは、
ライフイベントと仕事の両立、男女で家事、育児の参加など、当たり前の感覚となっていますが、
男性は、会社に長く勤めていると、
結局その意識がどんどん失われていってしまうように感じるとの意見もありますが、そうなのでしょうか?

藤井:男性はある意味、自分たちと同じような感覚を持つことを鍛えられていきますからね。

清水:そうなると、エンドレスで変わらないってことになりませんか?

藤井:子供のころの教育が明らかに昔と今では変わってきています。
30代後半以上の教育は、男の子は男らしくと言われ育ってきたので、
会社に入ってもさほど違和感はなかったと思いますが、今は大きく教育が変わってきています。
今の若い人たちが中高年層になる頃は、今の中高年層の人たちとは、かなり違ってくると思います。

清水:若手の男性社員も管理職を希望しない、断る人もでてきていますしね。

藤井:自主性、主体性を尊重され、のびのびと個性を発揮してやりたいことをやるといったように育ってきたので、
上下関係も気にしたりしないですよね。

清水:確かに気にしていませんよね。
あとどれくらいで、社会や組織は変わっていくのでしょうか?

藤井:会社によって進捗も違いますが、感覚的に後5年ぐらいでしょうか。
彼女、彼ら世代が大事なポジションに就いたら、色々と変化が起きるのかなと思います。
現在の管理職が変わったら、いなくなったらというよりは、若手の彼女、
彼らが経験と権限を持つことによって変化が起き、変わっていくような気がします。

■“女性”に対する取り組みについて

清水:別の切り口になるのですが、
まだ、多くの女性が活躍している働き甲斐があると言えない状況でもあるにもかかわらず、
男女で区別せず、男女一緒の内容で研修を希望する会社様が増えてきたように感じるのですが、
そこはどう感じますか?

藤井:いずれにせよ、働き方改革からの視点で取り組むのが良いのかなと思います。

 

清水:女性社員だけを集めて研修を行うと、男性社員から、
「女性ばかり研修をしてもらえてずるい」という意見がでたりすると聞くことがあります。
逆に女性社員からは「なんで私たちばかり」という意見がでてきます。
そもそも、本来の目的がずれているように感じますがこのあたりはどうでしょうか?

藤井:そうなんですよね。
今の時点では、30%女性管理職を引き上げる、明らかな差を埋めるまでは、
女性だけの研修はやった方が良いのではと思います。
ただ、その差が無くなってきたら、男女一緒に行った方が良いのかなと思います。
その時には、多様な部下を育成することに軸を置いた研修を実施したり、
現在実施しているリーダーシップ研修の在り方は変えた方が良いと思っています。

 

■リーダーシップの在り方

清水:組織では、リーダーシップが単一化していますよね。

藤井:そうなんですよ。
まだまだそういう傾向があって、いつまでも変わらないなと感じています。
改善すべき点だと思います。
自分の部下を育てていくための計画、
そのための1on1をどうやっていくのかという事のベースを研修で学び、
第三者にコンサルをしてもらいながら一緒に課題解決をしていくのが良いのかなと思います。

清水:型にはめようとしていますよね。

藤井:そうですね。

清水:なぜ、女性リーダー育成研修は行った方が良いのでしょうか?

藤井:女性リーダーの数を増やす必要があるということ、
やる気はない、自信はないが、伸びる可能性のある、優秀な人たちはいっぱいいるので、
その人たちがやってみよう、と思えるマインドセットと周囲の環境を整えてあげる必要性はあると感じています。
また、まだマイノリティの女性たちが管理職として活躍するためには、
社内ネットワークが必要になってきます。
横のつながり、同じ立場の人たちとのつながりですね。
そのため、女性リーダー育成研修は行った方が良いと思っています。

清水:ある程度、女性も上に上がっていくという認識ができ、
定着したならば女性リーダー研修を終了しても良いとは思いますが、
ちょっと取り組んだだけで、もう必要ない
、女性だけの研修は必要ないと取り組みをやめてしまう企業もありますが、
このあたりはどのように思いますか?

藤井:3年目、5年目研修は男女一緒で良いと思っています。
ただ、リーダー研修だけは、先ほどもお伝えした通り、
差がありますので、女性だけで実施を続けていった方が良いと思っています。
差とは、リーダーになりたいというマインド、経験、ライフイベントへの不安、
そして周囲を取り巻く環境として男女に期待することの差を無意識に持っている人がいる、という点です。

清水:意識の差というのは、小さい頃からのすり込みで差がでるのでしょうか?

藤井:そうでしょうね。
特に私の世代は、男らしさ、女らしさ、と性によって期待される在り方が異なっていました。
例えば、責任は男性が負うもの。
ですから、上に立つ人、大黒柱である管理職は男性と思って育ってきているし、
そして女性は母親として家族を守る。
稼ぐというイメージもあまりないと思います。

清水:おっしゃる通り、そういうイメージはないのかもしれませんね。

藤井:なりたい、なりたくないって言うよりは、「なる」って、思ってもいなかったのに、
急に管理職どうですか?と言われても心の準備ができていないので、急に引き上げても難しい。
そういう事だと思います。
若い世代は、心の準備ができているのかなとも思いますが、
30代、40代は、管理職になるつもりで経験を積んできていないし、
心の準備もできていないので、そこは丁寧に対応してあげないといけないと思います。

■これからの女性に必要なこと

清水:どんな風に女性自身は変わっていく必要がありますか?

藤井:自分の人生は自分で責任を持つ。
マネープラン、ライフプランも併せて、「自分はこうする」と決めることが大切。
「これしかできない」ではなく、「こうしたい」が実現できていると良いだろうなって思います。
そして、それができる環境が整っているようになっていたら良いなって思います。

清水:より自分で自分のことは考えて、行動していく。
「なんとなく」ではなくてってことですよね。

藤井:みんながイキイキと自分らしく、自信を持ってもらいたいですね。
どこでも活躍できる女性が増えたら素敵だなって思います。

清水:私もそう思います。
貴重なお話をありがとうございました。

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