Case 導入事例

CASE.8
組織全体を巻き込む女性マネジャー候補育成の仕組みづくり
第一生命保険株式会社 様
第一生命
Client :
第一生命保険株式会社

創業:1902年(明治35年)9月15日
設立:2016年(平成28年)4月1日
資本金:600億円
従業員数:55,757名(2021年3月31日現在)
主な事業内容:保険業
https://www.dai-ichi-life.co.jp/

左から
星野 景子氏
人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室 アシスタントマネジャー

猪平 徳子氏
人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室 室長

※本事例は、前身であるWisH株式会社にて実施したものです。
 肩書等は記事公開当時のものとなります。

1902年創業以来、「お客さま第一主義」という経営理念とともに、国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業の3つの成長エンジンを掲げ、「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」お届けしている第一生命保険株式会社。
「ダイバーシティ&インクルージョン」を経営の柱のひとつとして掲げ、多様な人財がリーテイル、ホールセール、アンダーライティング、資産運用、海外事業などといった多岐に渡るビジネルフィールドで活躍できる環境を整えてきた。

女性社員が約9割の第一生命様は、2005年に実施した従業員満足度(ES)にて、女性の満足度が低下している現状把握をきっかけに、多様化・高度化したお客様のニーズに対応しつつも、社会の変化に合わせて女性活躍推進を加速させてきました。

社会環境変化が速くなっていく中では、個性や能力を活かす人財の育成が重要と考える推進室は、コロナで環境が大きく変化した2020年、新しい価値・可能性を引き出せるニュータイプのリーダーの創出が必須だと判断。
1年間という長期間にわたって、弊社とともにコロナ禍という環境下において新たな施策として一緒に研修を作り上げました。

研修参加者と上司の関わりを仕組み化することによって、上司は職場での実践に前向きになり、研修参加者は上司の理解・支援をもらうことで成長・自信に繋がっていったとのこと。

当事者だけでなく職場そのものが実際に変化していく様を見て、取り組みの手応えを感じることができたのは、推進室自身が常に組織全体を意識して取り組む姿勢で動いていたからに他ならない。
なぜなら、その姿勢は、ダイバーシティ&インクルージョンの重要な考え方であるからだ。

インタビューでは、研修を実施するだけでなく、どうやって組織全体を巻き込んで実施していくかという過程、実施効果や課題を感じることができ、これからD&I推進をスタートする方や行き詰まっている方にとって大きなヒントがつかめる内容となっています。

取り組みに至る
背景・きっかけ

第一生命保険株式会社

ニュータイプのリーダー創出の挑戦

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清水

本日はお忙しい中ありがとうございました。
まず、はじめに、日経WOMAN6月号拝見しました。女性が活躍する会社BEST100の、女性活躍推進度部門で第1位おめでとうございます。本日は、その受賞にもつながった女性活躍推進の取り組みについて、ぜひいろいろお話を伺えればと存じます。よろしくお願いいたします。
まずは、第一生命保険様で、ダイバーシティや女性活躍推進の取り組みに至る背景ときっかけを教えて頂けますか。

当社は女性社員が約9割ですので、長きにわたり女性活躍を推進してきました。積極的な登用から始まり、能力開発、両立支援、女性社員の働き方の高度化、意識改革、女性リーダーの早期育成と進め、いまは女性リーダーの安定輩出のフェーズにいます。
女性活躍推進の取り組みのきっかけは、2005年に実施した従業員満足度(ES)調査です。調査によって、女性の満足度が低下していることが分かり、様々な対話を続けると、「ライフイベントがあっても働き続けたい」「もっといろいろ学びたい」との声が挙がりました。その声に応え、まず仕事と家庭の両立支援策の充実と、能力開発体系の充実を図りました。その後、2009年に人事制度を改定し、一般職と総合職を基幹職に統合しました。それまで一般職は事務やサポート業務が中心でしたが、基幹職では、企画・立案や営業に業務の内容が広がっていきました。多様化、高度化したお客さまのニーズに対応できるよう、社会の変化に合わせて女性活躍推進も加速化していきました。

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星野

多様化するお客さまニーズや価値観に向き合っていくためには、1人1人が働きがいをもって、自分らしい能力を発揮し、組織を強めていく。そのことが新しい価値やイノベーションを生んでいきます。社会環境変化が速くなっていく中では、均一的な人財ではなく、個性を活かす、能力を活かす、そういった人財への育成が重要であると思います。コロナで環境が大きく変化した中で、新しい価値、新しい可能性を引き出せるニュータイプのリーダーをつくっていかなくてはいけないと考えています。

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猪平

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清水

女性マネジャー候補の研修は多くの企業でも実施しているのですが、第一生命様の取り組みで印象深いのが、実施後のその先も見据えた上で研修をされていました。受講生のひとつ上の階層(女性マネジャー層)に対しても育成の取り組みをされ、かつ、女性マネジャー候補の研修と接続させるような設計になっていましたよね。管理職になったから終わりではなく、その先を考えて継続的に企画を作っていく。それがとても印象的でした。

女性マネジャーを対象とした研修と女性マネジャー候補の研修を接続させたねらいには2つの視点があります。

マネジャー側としては部下を持たない方に、女性マネジャー候補の研修を、部下指導の場としても活かしてもらうこと。

女性マネジャー候補側としては、職場に女性マネジャーが少なく、身近なロールモデルがいないという方に、この研修を通して多様なロールモデルを知っていただくこと。

そこがとてもうまく機能したと思います。

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星野

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清水

マネジャー層の方々が、「アンバサダー」と呼ばれる立場になって女性マネジャー候補の皆様に関わっていく御社の制度ですね。受講生は、アンバサダーとお話することに最初は緊張されていましたが、次第に打ち解けて、社内にはいろいろな女性マネジャーがいるということを取り組みの中で感じていらっしゃいましたね。

「マネジャーになってどんなことがよかったですか」など普段はなかなか聞けないことを質問し、マネジャーに対するイメージが具体的になったのが、キャリアアップに対する不安の払拭につながり、自分らしいリーダーを目指せばいいのだ、というマインドに変わっていったことは、大きな変化だと思います。アンバサダーからもこういう機会があって自分のキャリアを振り返ることができたという声があり、アンバサダー自身にとっても、キャリアの棚卸しをするきっかけになったのかなと思います。

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星野

女性マネジャーを対象とした研修と女性マネジャー候補の研修をミックスさせて頂いたのは、挑戦だったと思います。結果としてこういう形で効果が出たというのは、やってよかったなと思っています。

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猪平

WisHを選んだ理由

第一生命保険株式会社

職場実践を組み込んだ新しい研修

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清水

今までの研修は集合で取り組まれていたと思いますが、コロナ禍で、オンラインで実施することに戸惑いもあったのではないかと思います。いろいろ情報収集をした中で、当社を選択してくださった決め手は何だったのでしょうか。

御社にお願いさせて頂いた決め手の一つは、こんな研修をしたいという要望をしっかり汲み取って頂き、一緒に研修を作り上げていっていただけるところです。初めて研修をオンラインで実施するという状況の中でしたので、そういった点を信頼して今回もお願いしました。

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星野

オンライン前提で、オンラインだからこそ、こういうことができるということをご提示いただきました。今までは1日か2日に集中して行う集合研修が多かったのですが、研修と研修の間に職場での実践を組み込み、反復学習として繰り返し繰り返し取り組むことによって、研修での学びを職場での業務に活かしながら目指すリーダー像を描いていけると思えたことが、ご依頼させていただいた大きなポイントだったのかなと思います。

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猪平

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清水

ありがとうございます。初めてオンラインで研修を実施する企業が増える中で、第一生命様と同様に研修の実施から効果があるかどうかまで不安に感じる方が多いので、より一層、一緒に作り上げる研修は大事にしております。研修はオンラインであってもオフラインであっても、一度きりでは効果がわかりづらいものなので、仰るように職場での実践を組み込んだ反復学習も非常に大事だと思います。

職場での変化

学びを実践するには上司のサポートが重要

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清水

受講生の変化や職場における周囲の変化など、この取り組みを通して御社で何か変化はありましたか?

職場実践を研修カリキュラムに組み込むことで、研修参加者と上司との関わりを仕組み化することができました。上司が職場での実践に深く関わってくださるようになり、アドバイスも、研修での学びを踏まえた実践的なものに変わってきたと感じています。そして、女性マネジャー候補の育成に対する理解も深まっていきました。

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星野

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清水

まさにインクルーシブな職場に変わった瞬間ですね。お互いに尊重されている事はもちろんですが、同じ目標に向けてきちんと協働されている事が大切な「インクルージョン」において、受講者の成長と上司の方の育成が同じベクトルを向いた瞬間で素晴らしいです。

研修にオンライン・インバスケットをご提案いただいたことと講師との面談が大きかったです。受講生が客観的に自分の弱みや強みを認識するということは初めての取り組みだったのですが、行ってよかったと思っています。「弱みではなくて強みをどんどん伸ばしていけばいいのですよ」との講師からの後押しは、受講生の自信にも繋がったと思います。

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猪平

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清水

講師が受講生全員と面談する研修は非常に珍しいです。独自の手法を持つ講師もタッグを組むことで様々な角度からのアプローチが可能になります。今回はその結果、受講生の自信に繋がったとのことで嬉しく思います。

今後の取り組みについて

支援される職場づくりが効果的

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清水

今後に向けての取り組みに向けて考えていらっしゃることはありますか?

女性マネジャー候補の育成に向けては、研修による知識付与だけではなく、上司や職場を巻き込んだ育成の仕組み作りが本当に重要だと改めて実感できました。今後は、職場・上司・経営層と皆が育成を支援していけるような体制を色々な階層で構築できたらいいなと思っています。また、研修を卒業した後も定期的に成長をサポートしていける体制を作っていきたいと思います。

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星野

受講生の成長に向けて、職場の支援が一番効果的だと思いました。昨年の実施状況を踏まえ、今年は受講生の上司宛に、研修後に職場での実践機会の提供を依頼するメールを送りました。学ぼうという姿勢があっても、そういった力を発揮できる場がなければ厳しいこともありますので、彼女達がそういった力を発揮できる場を提供してくださいと、こちらからお願いしました。このような対応ができたのは、昨年の取り組みがあったからこそと思っています。

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猪平

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清水

女性活躍推進やダイバーシティは当事者だけに取り組みをしても、なかなかうまく発揮できなかったり、周囲からのサポートが得られなかったりします。研修で学んだことを発揮したいと思っても、周囲、主に上司の理解、支援をいただかなければ以前と同じ状態に戻ってしまいます。しかし、うまく巻き込んで進めていければ受講生のみならず、周囲の人達も成長し職場そのものが変化し始めます。変化を起こすD&Iや女性活躍推進には、第一生命様のように、周囲を巻き込んでいくことが必須であると、ご支援をしていて常に感じているところです。

職場での実践機会の提供を依頼するメールに関して、受講生の上司から様々なメッセージをいただき、社内の雰囲気が変わってきたと感じる場面が増えてきました。私たちが取り組んでいることの結果が少しずつ現れてきて、手ごたえを感じています。

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星野

職場から、そうしたメッセージをもらえるのは嬉しいですね。
最近では、組織が学習するということがトレンドになってきています。女性マネジャー候補の当事者たちが変化を起こし、そのことによって組織が丸ごと成長していくためには、研修での学びを周囲の人たちへフィードバックすることで、周囲も受講生の行動によって触発されていく。また、周囲からの刺激を受けて本人も成長する。こういったサイクルで、まさにニュータイプのリーダーが職場で生まれてきているのかなと思います。

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猪平

担当者としての
考え、思い

本人たちの活躍できる環境作りが全てに繋がる

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清水

それでは、最後の質問です。ご担当者としてそれぞれのお考えや思いを聞かせてください。

研修では受講生1人1人がしっかり学べる環境を整えて、少しでも多くの気づきを持ち帰って欲しいと思っています。事務局として、学びの環境を整備することで、研修の効果を最大にしたいと思います。

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星野

社会もどんどん変化していく中で、きっと求められる人財も変わってくると思います。1年前がそうだったように、1年後もどうなるか分からないほど変化の速い時代が訪れています。必要となる人財像を迅速に捉えながら、どういったことを取り組むべきなのか、どういった育成が必要なのか、アンテナを張りながら研修を行ってきたいと思います。ただ、研修や育成は一つの手段にすぎません。最終ゴールは本人たちが活躍できる環境を作っていくことです。それが、組織のため、会社のため、そしてお客さまのために繋がっていくのかなと思います。

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猪平

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清水

ありがとうございます。お二人は常に受講生を見ていらっしゃって、その先にいる「お客様」を見ていらっしゃる、会社の DNA だなと感じました。それを踏まえた人材育成であり、経営層や上司など社内の方々を巻き込んでいく力もすごいなと感じていました。研修や人材育成を会社の中でいかに意義あるものにするかを常に考えて行動されていて、研修を実施するだけではなく、会社全体に、この取り組みをしっかり理解してもらうということを常に意識して動かれていたのは印象的でした。
組織全体を巻き込んで取り組まれているからこそ、こうした結果につながっているのではないかと感じでいます。

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清水

貴重なお話をお聞かせいただき本日はありがとうございました。本年度もすでに取り組みがスタートしており、実施の真最中ですが、昨年度よりもさらに良い場となるよう、引き続きよろしくお願いいたします。

清水美ゆき

担当プロデューサーの声

第一生命様の女性活躍推進の取り組みには、2020年度から関与させていただいております。これまで、第一生命様で実施してきた女性活躍推進の施策を、さらにステップアップさせるための節目でもあり、その大事な時期にお声がけをいただきご担当者様と一緒に、今回の施策をつくりあげることに関わらせていただきました。

コロナ化という、これまでとは全く異なる環境下において、この状況だからこそ効果的な施策となるよう、全体設計を行いました。
オンラインのメリットや効果性に着目して組み替えられた施策は、ご担当者さま、そして受講者の皆様にとっても初めての試みであり、当初は手探り状態ですすめられていましたが、新しい環境や施策を積極的に取り入れていくこともまた、変化に適応することの一つであると、前向きに捉えていただき、オンライン研修ならではの効果性や有効性を十分に発揮できた取り組みとなりました。

次世代の幹部、リーダーを担う女性社員の皆様にむけて、各階層に分けてお取り組みを行いました。それぞれの階層に適した内容、また全体設計を行い、第一生命様ではこれまでお取り組みされていなかったような形式での実施も含まれての実施となりました。
対象となる受講生のみならず、社長、役員、管理職層のみなさまも巻き込んで施策を進めていたこともあり、会社全体として重要な位置づけとしてお取り組みが周知されることとなりました。

プロジェクト型と言われる長期間にわたる施策において重要なことは、各回において事前に決められた内容をただ実施するのではなく、実施の都度、受講生の状況や周囲の様子を見て、ご担当者様、講師、WisHが連携をとって臨機応変に効果性のあるものへ組み替えていくことです。また、周囲(参加者を取り巻く現場、組織全体)をいかにして、この施策に巻き込んで取り組みを進めていけるかです。
第一生命様では、これらすべて力を入れて取り組みがされていたという印象でした。数多くの企業様に関わらせていただいておりますが、ご担当されている皆様が、研修以外のところで、熱量高くお取り組みされている様子に触れることはそう多くはありません。そのご様子を間近で見ていた私自身も、とても刺激をいただけた期間でした。

会社としてこれまでの取り組みをさらにステップアップさせるべく始まった施策に、1年を通して携わることができたことは大変貴重でもあり、また、先日、日経WOMANの女性が活躍する組織ベスト100の女性活躍推進部門で1位を受賞されたと伺い、担当として関わらせていただいた私も、大変嬉しい気持ちでした。
本年度の施策もすでにスタートしていますが、昨年度からさらにブラッシュアップしたかたちで、受講者の皆様にとって成長の機会としてご提供できるよう、引き続きご支援していきたいと思います。

ダイバーシティ&インクルージョン
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