Diversity Caféダイバーシティ Café


ダイバーシティ Café - イベントレポート

特別セミナー(パネルディスカッション)
【イベントレポート/パネルディスカッション】“違い”を“強み”に変えるリーダーシップスタイル
2018.08.22

【イベントレポート】WisH株式会社 主催特別セミナー(2018年7月10日)

特別セミナー「一人の女性の小さな一歩が、やがて組織を変える!女性の強みを活かして組織に変化を起こす”セルフ・リーダーシップ”とは?」
パネルディスカッション
“違い”を“強み”に変えるリーダーシップスタイル


「セルフ・リーダーシップ」をテーマに掲げ開催した特別セミナー。
パネルディスカッションでは、女性活躍推進に取り組む企業のご担当者様をお招きし、自社の事例をご紹介いただきました。

パネリスト
金田 由美氏
大日本印刷株式会社
労務部 働き方の変革推進委員会事務局 兼 ダイバーシティ推進室 シニアエキスパート

小本   辰之亮氏
明治安田生命保険相互会社 人事部 ダイバーシティ推進室 主席スタッフ

 

女性が少ない会社と多い会社、それぞれの取り組み

清水:まずは各社のお二人からそれぞれのお取り組み状況をご紹介いただけますか。

金田:ちょうどダイバーシティが部管轄になりました。
創業142年ということで、ダイバーシティを進める上でかなり受難があるのではないか、と思っていただいて構いません。
従業員数についてご説明します。企業単体では1万人ほど。
そのうち女性比率は全体の19.4%。4人に一人ですね。管理職比率をみてみると4.7%。
新卒採用では3人に一人は女性というような具合です。

現状、ロードマップでは第3ステージの段階です。2000年頃から取り組みを始めました。
まずは採用数を増やしていったんです。営業や技術に採用職域を広げていきました。
5,6年後に結婚や出産のライフイベントにあたる時期が訪れ、就業が継続できないケースが出てきました。
理由は男性社会だったからです。
そこで、次のステージで仕事と出産・育児の両立支援を行いました。
ただ、そのような目的で制度を整えても、「女性に優しく、女性がステップアップするには難しい会社」という風に社員が感じることもありました。ここまでが第2ステージですね。
第3ステージでは、女性のリーダー、管理職を増やすことを目指しています。
国の女性活躍推進法にも背中をおされながら、第3ステージに差し掛かっている、という現状です。

ダイバーシティ推進の柱は3つ。
①多様な人材の育成、②その人材が活躍できる風土醸成、③多様な働き方の実現。
女性に限らず、さまざまな層を対象にしています。
昨年度から最も力をいれているのは、女性のリーダークラス層を増やす施策です。
会社の意思決定が男性中心になってしまっているんですよね。
そこに女性を増やしていこうという取り組みです。
女性を育成するときには、上司へのアプローチと風土作りも一緒に行っていくことを大切にしています。

 

小本:私は人事部に2015年4月に着任しました。
昨年4月から、ダイバーシティ領域も担当しています。
当社では昨年4月に企業理念を一新し「明治安田フィロソフィー」を定めました。
経営基盤戦略のなかの人事分野において、計画2年目にきています。
弊社固有の課題として、20代30代よりも40代50代が極端に多いことと、社員の65%が女性であることもあげられます。
女性活躍推進の取り組み開始自体は2011年度です。比較的遅めですよね。
2012年度に推進室という専門部門をつくり本格的に開始しました。
最初は実態把握と調査を行い、何が必要なのか調べた時期でした。
次にハード面の整備。主に人事、職務、育成制度を整備していきました。
そして、これらをしっかりと機能させ円滑に運営することに重きをおいています。

職務制度・人事制度の改正をご紹介します。
もともと、総合職、特定総合職(エリア総合職)、アソシエイト職(一般職)の3つの職種がありました。
これらの職種を2015年4月から段階的に統合再編し、2017年4月に全て総合職に一本化しました。
ポイントとしては、同じ総合職であるということを明確化したということです。
同一賃金、同一職務の給与体系を推進しました。
女性管理職候補者向けの育成態勢(通称「L―NEXT」)も強化しています。
社員を3つの層にわけた研修等を開始しました。
公募型の研修では、200名に対して700名の応募があったんです。成長するきっかけを作りたいという女性が増えてきたという印象を受けています。
ちなみに、女性管理職の比率は11年度は3.3%だったところ、今は23.5%と伸びてきています。
2020年度には30%を目標としています。

 

一般職と総合職を統合

清水:ご紹介ありがとうございます。
ではまず、一般職について小本さんに質問です。一般職の廃止、統合を進めている企業さんは多いんですよね。
一方で、進め方について悩まれている企業さんも多い。取り組み開始時には社員の方にどんな風に伝えられたんですか?

小本:3年間かけて丁寧に説明を行いました。
職務制度の改正も併せて行い、女性ならではの経験やノウハウをいかせる職務ポストをつくりました。
抵抗感をあらわにする社員もいましたよ。

清水:最後まで納得されなかった社員さんもいらっしゃいましたか?

小本:はい。何十年と誇りをもってご自身の職務を担当されてきた方々ですからね。
いきなり「総合職に変わります!」と聞かされると、「え?営業なの?」という印象をうけるんですよ。

清水:そうですよね。

小本:そういう声を多く聞いたので、会社の想いをしっかり伝えないと、と思ったんです。
そこで、社長の想いを形にしたビデオを制作し配布しました。加えて、制度の説明を勉強会形式で行いました。
ポイントは、イメージしやすいキャリアルートを3つ用意したことですね。
1つは今の仕事を極めていただく、2つ目は今の仕事の上位職を目指すキャリアアップという方法、3つ目はフィールドを変えて新しい分野にチャレンジしていただく。
色んな働き方があることを伝えていきました。

清水:本人の希望を尊重するかたちですね。

小本:はい。例えば、子育てや家庭の事情で「今は挑戦できないけれどもゆくゆくは!」という方に向けても、本人の希望を最大限考慮しています。

清水:総合職への統合後、社内で変化はありましたか?

小本:全社で大きな変化はまだ見られないですね。
人事部としては、社内チャレンジ制度への応募が増えた点は変化と感じています。
地域型総合職は、転居を伴う異動がなくなります。そのことも影響しているかもしれません。
チャレンジ制度とは、他部署への期間限定社内留学のようなものです。

清水:キャリアイメージがしやすくなったことで、成長意欲がより高まったのでしょうか。

小本:そうですね。また、社長が常日頃から「身の丈に合った背伸びをしなさい」と発信していることも、影響していると思います。

清水:人事部からの丁寧な説明と社長様からのメッセージが社員皆様の心に届いているんですね。
総合職への転換に伴い、対象一般職の上司の方には協力を仰ぎましたか?

小本:新制度を伝える勉強会の主催を依頼しました。
そこでは、上司本人の想いも伝えていただくようお願いしました。

清水:なるほど。上司の方はプレッシャーもかかりましたね。

小本:そうかもしれません。
社長のメッセージを活用しながら伝えていただくようお伝えしたり、バックアップは行いました。

清水:皆さんを巻き込みながらの新制度への転換ですね。

 

 

女性社員と部長、どちらも主役のプログラム

清水:次に金田さんにお聞きします。大日本印刷様では女性管理職登用増加に向けて、
ご説明の段階だけでなく、推進施策の過程であらゆる層を巻き込んでの研修プログラムを実施されていますよね。
どうして関わり合いの多い取り組みを実施されることになったのでしょうか。

金田:とかく女性社員に焦点があたってしまいがちですが、当社の雰囲気・風土を考えたときに、女性の横社会と男性の縦社会をうまく融合したいと思ったんです。
冒頭お伝えしたとおり、現在、女性リーダー、管理職を増やすプログラムに重点を置き取り組みを実施しています。

清水:上の層にあたる、「女性リーダー育成」と「ダイバーシティ推進リーダー育成」について
教えていただけますか。

金田:前者は名前のとおり、課長クラスの女性リーダーを育てるプログラムです。
外部講師の研修を受けたりします。
もう一方は「ダイバーシティ推進委員会」を翌年執行する推進リーダーを育てるプログラムです。
ここでは企画の立案・推進のコンサルテーションを受けています。
あとは、内部型の企画ですね。メンタリング制度もあります。
この「ダイバーシティ推進委員会」は会社公式組織で、部門ごとに設置があります。
育成対象者のほとんどが本部長クラスです。
本部長が女性社員をメンタリングし、女性社員はメンタリングされながらメンターとしても育成される。
そしてメンターとして下の世代をメンタリングしていく、そんな継承の仕組みが出来てきます。

清水:御社の現状からすると、推進リーダーは男性の方ばかりですよね?

金田:9年間やって女性は一人だけです。卒業生の人数は100人位ですね。
推進リーダーのミッションは、女性の生の声を聞きながら、翌年の施策を立案し実行をすることです。
かつ、次の世代の女性たちのスポンサーとしてもご活躍いただきます。
また、推進リーダーの皆さんには、ご自身のキャリアを女性社員に伝えていただくよう依頼しています。
女性からすると、自分より2階層上の層と人脈がもてるきっかけを得られるだけでなく
経営視点、管理職としての姿勢を学ぶ機会となっています。
推進リーダー同士で飲み会も行われるなど、横のつながりも強くなってきているようです。

清水:サポート目的で女性社員の上司にあたる管理職の皆さまが研修に参加いただくことはあっても、
どちらも主役でどちらにもミッションがあるというプログラムは珍しいですよね。
実際はどちらかが先に始まったのでしょうか。

金田:女性営業職のメンターを育て始めたことがきっかけです。
女性営業職の採用を行うと、退職者も目立つようになってきました。
そこで退職を事前に食い止めるためにメンター制度を取り入れたんです。
メンターの育成時には、実際にメンタリングを体験してもらいました。
具体的には、さらに上層部にあたる本部長クラスの方がメンター対象者をメンタリングし、
方法と良さを知ってもらうようにしました。
結果、相乗効果があり、意思決定権を持つ本部長クラスでも女性を応援しようという機運が高まってくれたんです。
女性営業職の声を明確に聞いたメンターには、施策を運用できるような人事権も与えられ「ダイバーシティ推進委員会」が作られました。
こうして、委員を育成するプログラムに発展していったという流れです。
おかげさまで、ワーキングマザーの営業職も増えてきたので、今では営業職に限らず職域も広げて実施しています。

清水:組織風土で影響を与えているなと感じていることはありますか?

金田:製品別事業部制をとっているので、部署ごとで文化が全く違います。
まるで違う会社のようです。
そこで推進リーダーには自部門の文化に合う方法で、部門内の社員の声を聞きながら、自由にやってもらっています。

清水:なるほど。御社らしい進め方が出来ているんですね。

 

人事担当者として

清水:次に担当者としてお二人のご意見を聞いていきたいと思います。金田さんは人材育成・教育部門の担当が長いんですよね。

金田:はい。担当業務の一環で、約12年前に女性の異業種交流研修に参加しました。
男性社員のなかで楽しく仕事をしている女性たちが、なぜ女性だけ集められないといけないんだろう、と当初は嫌悪感をいだいていました。
そんな私たちが、なんて心地よくて、バイタリティがあって、力のある集団なんだろうと、共に過ごすなかで目覚めていき、この楽しみを自社に持ち帰ることとなりましたね。

清水:金田さんの交流研修での経験からダイバーシティのお取り組みもスタートしているんですね。

金田:ダイバーシティというほどではないですが、私も当社で女性同士が集まる場をスタートさせました。
研修自体はかなりハードで、参加者同士、切磋琢磨し合うことができました。
責任のあるお仕事をされている参加者が多くて、一方の私は正直、まだ楽しく、同じことをずっとやり続けていた状態。
成長の角度が全然違うなと痛感しました。
我々の会社は男性社会で良い意味でも悪い意味でも非常に女性に優しい環境でしたので、
可愛ければ女性にもチャレンジさせてほしい、というメッセージも伝えるようになりました。

清水:なるほど。一方、営業職から人事部にご異動され、ダイバーシティ担当に任命された小本さんですが、当初のお気持ちはどうでしたか?

小本:正直なところ、社内での「女性活躍推進」は前のめりだと感じていました。
取り組み内容も知っている風なフリはしていましたけど、強く意識はしていませんでした。
でも、実際に担当してみると、これは必要なことだとすぐに確信に変わりましたね。
先ほど申し上げたL-NEXTは地域型総合職だけが対象なんです。
つまり、経験したいけれども経験の幅が狭い方向け。
プログラムに参加した方の様子は、参加した前と後では、目に見えて違うんです。

清水:最後に今後のお取り組みへの想いをお聞かせいただけますか。

小本:ゆくゆくはこういった施策がなくなることが女性活躍推進と思っていますが、
まずは女性管理職の方が中心となって、自立したネットワーク、互いに支えあうネットワークが社内に出来上がればいいなと思っています。
そこにいたる過程を人事部がサポートしていきたいです。

金田:ダイバーシティ推進を通じて、一人一人のキャリア支援するような活動になればと思っています。
人材育成部門の経験が長いことも影響していますね。
女性に限らず対象範囲を広げるなかで、全社員が元気よく働いて、自由にものが言える風土、それがダイバーシティ経営と思っています。
私の子どもも社会人で、互いの仕事の話もします。甘いなと思うこともあります。他にも普段一緒にいて、生活スタイル、ショッピングのやり方ひとつとっても全然違うんですよね。
ITネイティブな子どもをみていると、意思決定が出来る立場の人たちが年配の方ばかりで、
いつまでも会社を牛耳っているようなことでは新しい文化は生まれないなと思っています。
多くの人の背中を押してあげて、どんどん声をだしていける文化をつくりたいです。
そうすることで事業貢献していきたいと思います。

清水:ありがとうございます。それぞれの企業によって風土や状況は違いますので、進む速度や結果の出方も違います。
それでも担当されているご担当者様がビジョンや意思をお持ちだと、着実に形にあらわれて前進されてきているなと感じています。
今日はそんな想いをお持ちのお二人にお越しいただきました。色々とお話いただきありがとうございました。

 


~主催者より~
「リーダーシップ」や「管理職登用」とう言葉に、女性たちは精神的に構えてしまったり「大変なことをやらされる」というイメージをどうしても持ってしまいがちです。
しかしここで言う「リーダーシップ」とは、先に立って、誰かを牽引するということよりも
より豊かな自分の人生を送るために、その大半を費やす仕事においても、自分の信念や
実現したい世界観を貫いて成果を出すために、自分自身を引き上げる力、として
”セルフ・リーダーシップ”と定義しています。


関連記事一覧

1.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第1弾】全体レポート

2.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第2弾】島田氏講演

3.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第3弾】坪内氏講演

4.【イベントレポート/WisH特別セミナー2018 第4弾】パネルディスカッション ※本記事

ダイバーシティ&インクルージョン
お悩みは お気軽にご相談ください。