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ダイバーシティ Café - WisH ブログ

Vol.14 藤原快瑤
ニュージーランドレポート:LGBT最前線
2019.04.02

こんにちは。WisHの藤原です。

3月18日~3月22日にかけてニュージーランドの首都ウェリントンで
ILGA(イルガ)という国際NGOが2年に1回グローバルレベルで開催する性的少数者に
関する国際会議に参加してきました。

今回は約100か国から参加者が集まっていて、国連機関で働いている人から学者さん、
国際NGOで活動している方々など様々でした。
プログラムは、全体セッションに加えて、分科会形式で、
それぞれの現場や国での状況・活動の共有をしたり、
テーマ別のセッションやワークショップがあったりでした。
会議での公式言語は英語とスペイン語、
そして全体セッションには字幕と手話通訳つき、
ときどき先住民のマオリの言葉も混じっている、という環境でした。

 

 

ニュージーランドに到着し、
空港を出ると、
早速レインボーフラッグが
そこらじゅうに立ち並び、
今回の会議の歓迎ムードが
伝わってきました。
しかし、ニュージーランドでは、
会議の始まる3日前の3/15(金)に
モスクを狙った銃乱射事件が
起こっていて、会議の前日には
追悼集会で1万人以上が集まるなど、
国全体としては悲しみに
包まれていたなかでの
スタートでした。

 

 

レインボーパレードのイベントも中止となり、予定されていたアーダーン首相の今回の会議への参加も中止となりました。

そのようななか始まった会議は、マオリの歓迎の歌で始まり、ウェリントン市長の挨拶があり、テーマ別分科会となりました。
私はLGBTのセックスワークと政策提言のセッションに参加し、
政策提言のセッションでは性的指向の法律に関する世界地図の最新版の発表もありました。
そして1日目の夜は、国会のレセプションに参加させていただきましたが、
議会の前の国旗も追悼のため全部上に上がっていませんでした。

 

2日目、3日目も分科会があり、3日目の本セッションの始まりには、
先述の通りジャシンダ・アーダーン首相が来る予定だったのですがテロ対応で欠席となり、財務大臣が来てくだり、
また世界初のトランスジェンダーの国会議員であるジョージナ・ベイアーさんのスピーチもありました。

 

 

参加した分科会では、難民や亡命者の話、国籍・宗教・民族など様々な切り口から生きづらさという次元を
超えた困難を通過して今ここにいらっしゃる方々の生のお話と世界の理不尽さに何とも考えさせられました。

一括りに「LGBTコミュニティ」と語られがちですが、その中でもそれぞれの抱える難しさも違い、
そこに更に周縁化されやすい層が存在しているのも事実です。
そんな議論もあらわになった瞬間がありました。
(会議ということでプレゼンターがいますが、かなり参加型のセッションが多いです)

その場面を通して、改めて私たちがダイバーシティ推進というときに、見落としていない視点がないかについて、
意識的であることはとても大切なことであると感じました。

ちなみに、まだまだ日本ではあまり議論されていませんが、
交差性(インターセクショナリティ)について意識しておくことも
真のダイバーシティ推進には必要であると個人的には信じています。
交差性とは、障害を持っていて少数民族であったり、
イスラム教徒でセクシュアルマイノリティであったりという2重3重のマイノリティ性を有していることです。
ダブル・マイノリティというと分かりやすいでしょうか。
ひとつのトピックに注目しすぎると見落とされがちになります。

 

さて、3日目のセッションでは、国連開発計画(UNDP)から出された「LGBTI インクルージョン指標」の発表がありました。
2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では
「誰一人取り残さない」ということが書かれていますが、
そのとき採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、LGBTという文言は入っていません。

この指標は、1)経済、2)安全、3)健康、4)教育、5)政治参加の5つの側面で成り立っていて、
SDGsに明文化されていないLGBTのことについて、各国の状況を可視化するために開発されたそうです。
運用はまだまだこれからですが、このような指標により、各国の状況が可視化され、
それぞれの国での動きが加速する一助になったらと思います。
日本では企業のLGBTに関する取り組みを促進するためのWork with Pride という指標がありますね。

 

 

余談ですが、時々、日本好きな外国の参加者がいて、私が日本人であるというだけで、
親しく話しかけてくれる人とかもいて、日本のパスポートの強さもそうですし、
多くの特権を享受してのこの時間であると感じています。

 

その他、印象に残っているのは、今、アジアでは婚姻の平等に向けての台湾が一番乗りで法律が成立しそうですが、
そのセッションで台湾のトップのビデオメッセージがとても謙虚かつオープンで素晴らしかったことです。
そして、それに対して、中国からの参加者が「そのメッセージを見て、涙が出そうになった。中国も台湾に続きたい」と
みんなの前で発言していたのが、個人的には両国の関係性を考えたときにとても意義深いコメントだったと感じました。

今回は、私の専門分野である性の多様性(LGBT)を切り口に、国際会議の様子を簡単にレポートさせていただいたため、
日本の企業での取り組みとは少しかけ離れた世界の話のように感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ダイバーシティ&インクルージョンの本質は、私のなかでは地続きだと思っています。
*更に詳細の話をお聞きになりたい方はお問い合わせください!

 

人をその人の属性によって一般化しないこと、自分の無意識のバイアスに自覚的であること、
評価判断を保留して話を聴いてみること、自分と違うものに対してもオープンになってみること、
一人の声(少数の声)に耳を傾けること、自分がマジョリティ側(特権がある側)の立場のとき、
その立場や力をインクルーシブな組織づくりに活かすことなどなど。

 

ダイバーシティを推進するだけでは十分ではなく、いかにインクルーシブな(多様性が尊重され化学変化を起こせる)
職場をつくっていくかが大切ですとお伝えしていますが、
そのために、上記のことが大切なキーとなってくるのだと考えています。

 

今年日本では、4/28~5/6がプライド・ウィークとなっていて、
4/28~29は代々木公園でプライド・フェスティバルがあります。
多くの企業や団体が出店していますので、よかったら是非足を運んでみていただければと思います。

 

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